人生の雑記帳

思ったこと。気付いたこと。疑問。後悔。思い出。忘れたくないこと。そんなことを書き留めよう。

ピザ屋の裏話その① -デリバリーのお仕事-

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私は大学生のとき、ピザを売る店でアルバイトをしていた。

気付くと5年くらい続けていた。

私の名誉のためにいうと留年したわけではない。

そのくらい仕事と職場の雰囲気が自分に合っていた、ということだろう。

当時は今と違って

  • 注文は電話かFAXのみ
  • クオーターメニューがまだない(当時はハーフ&ハーフもまだ珍しかった)
  • スマホがないので配達時に居場所が特定されない
  • 支払いはすべて客の自宅で現金のやり取り

というかなりアナログな時代だったが、だからこそのびのびできたともいえる。

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ピザ屋、といえば今もあちらこちらに林立している。

ピザーラピザハット、シカゴ、ドミノ・・・それだけ売れるのだろう。

余計なお世話だが、ピザ屋にいるときに全然注文が入らない時間帯があり、

こんなんで店やっていけんのかな?と心配したことがあった。

ピザというのは食材原価はそんなに高くない。

生地とソース、それからトッピングが何種類かあればよく、冷蔵すれば数日はもつ。

今の店はサイドメニューが多くて大変そうだ。

何の商売でも同じかもしれないが、原価のうち最も高いのはやはり人件費だ。

特にデリバリーと呼ばれる配達員にかかる費用が大きい。

1回の配達で10件回れるならいいが、そんなに注文はこない。

配達先が複数あったとしても方角が正反対、ということもある。

だいたいの場合が1回出かけて1件配達して帰ってくる、というパターンだ。

距離にもよるが、20分は帰ってこないことが多い。

コンスタントに注文がきても1時間に3件程度の配達しかできないのだ。

 

逆にいえば、宅配ピザが高いのはこの人件費に起因している。

ピザが食べたくなった人が全員店舗に買いに行くのなら

もっと安く販売できるはずなのだ。

だが、家にいながらにして熱々のピザを届けてもらって食べる、

という消費スタイルが既に根付いている。

要はあのバカ高いピザの価格には、消費者側が「買いに行かなくて済む」という

付加価値が多分に含まれている、というわけだ。

あの価格設定もそういう需給バランスで決められている。

今以上に安くすると注文が入りすぎて配達が追い付かず客を待たせすぎてしまう。

高くすれば注文がこない。

ほとよい注文数とデリバリーの回転率のバランスで成り立っているのだ。

 

前置きが長くなったが、私は19くらいのときに店に入った。

前記の有名どころではなく、場末の弱小ローカルチェーンだ。

でもある程度のリピート客はついており、それなりに売上はあった。

当時の私は車の運転免許を取ったばかりで、とにかく運転がしてみたかった。

北海道では雪が積もってない季節はバイクも併用されるが、冬季は全部車だ。

運転の練習もできるし、メイキングスタッフの女の子とも仲良くなれるし、

なかなかいい仕事の選択をしたかな、と思ったものだ。

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配達の仕事はもちろん注文されたピザを届けることだ。

電話で注文が入ったら、店内に貼り出されたバカでかい地図をまず見る。

そして客の住所と店の位置関係を確認して、行き方を覚える。

出かける前に同じ方角から注文がくれば待って一緒に持って行くこともある。

その場合は2つの住所への行き方を頭に入れなくてはならない。

 

ピザ屋はクリスマスと正月が一番忙しい。

それぞれの需要源はパーティーとゴロ寝だ。

このときばかりは2件どころではない注文を1人で捌かないといけなくなる。

景気が良かった時期に1度だけ8件の注文をまとめて持って行ったことがあった。

助手席に積み上げるのだが、もはやピザの斜塔だ。

急ブレーキなんてかけようもんなら倒壊してチーズが生地の外に流れてしまう。

そしてさすがに6件目くらいになると行き方が頭からすっかり飛んでいる。

スマホなんかないのでGPSもグーグルマップも当然使えない。

車に積んであるゼンリン社製の地図を見ながら客に電話して場所を確認するのだ。

そんなこんなで8件の配達が終わったのが出発してから実に2時間後だった。

 

まあこんな感じで配達のスキルを高めていくわけだが、

慣れてくると店から客の家までの道のりを"線"ではなく"点"で覚えられるようになる。

配達区域内に「ここなら地図見なくてもいけるな」という場所をいくつも作るのだ。

所謂"ランドマーク"、つまり目印だ。

1件の配達につき目標のランドマークとそこからの行き方だけ覚えればよくなり、

頭に詰め込む情報量が格段に減る。

 これが区域内に満遍なく散らばるようになればデリバリーとしては一人前だ。

 

ここまでがデリバリースタッフの主な仕事だ。

もちろん配達に行ってないときは電話も受けるし、

生地の仕込みやピザを入れる箱の組み立てなんかをやったりもする。

なんもないときはメイキングの女の子と喋ったりもできる。

そしてそんな時間が一番楽しかったりもする。

ピザ屋のもうひとつの大切な仕事であるメイキングについては

別の記事で書いてみようと思う。