女の子の話その⑥ -夢のような日々、そして暗転-
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↓ 前回のお話 ↓
晴れてNちゃんとの交際がスタートした。
「ずっと大好きだったNちゃんという彼女がいる自分」という現実を噛みしめる毎日。
これだけで何杯でも御飯が食べられそうだ。
かといって特段行動様式が変わるわけではない。
お互いにまだ16歳というちょっと大きいだけの子供だ。
部活終わりに一緒に帰ることが共有できる大切な時間だった。
所謂、"放課後制服デート”だ。
そのうちまっすぐ駅に向かわず、途中の公園で一緒に過ごしてから帰るようになった。
そしてさらに朝の登校時にも、車両とドアの位置を決めて待ち合わせるようになった。
こうしてできるだけ2人の時間を増やしていった。
どこからどんな情報が伝わっていたのか知らないが、あのマネージャのJちゃんが
「あんたたち、1年生のカップルの中で2番目に評判いいよ!」
という、謎の序列を教えてくれた。
微妙な評価だが、2番目というのが妙にリアリティがあり、
例えリップサービスだとしても素直に嬉しく思った。
今更だが「1番目」が誰だったのかが気になって仕方ない。
付き合い始めて間もなく、Nちゃんは私にあるコンプレックスのことを話してくれた。
先天的なものなのか、ケガがもとなのかはわからないが、片目の下だけ色が
少し違っていて、俗にいう"青アサ"や"青タン"のようになっていたことだ。
もちろん私も気付いてはいたが、きっと早目に私に確認しておきたかったのだと思う。
気にして当然だろう。
隠せる場所ではないし年頃の女の子ならなおさらだ。
たまに治療のためか目の下にガーゼや絆創膏を貼っていた日もあったのを覚えている。
クラスの一部の男子が彼女の目について、心無い陰口を言っているのを
耳にしたことがあり、まるで私がけなされた気分になったものだ。
私は彼女の目のことなどまったく気にならなかったが、
彼女がそのことを気にしていつも下を向いているような子だったら
私は好きにはならなかったんじゃないかと思う。
それどころか、本人はきっと気にしているはずなのに、それをまったく感じさせず
明るく自然に振る舞う彼女にますます惹かれた。
私はそういうNちゃんを"まるごと"好きになったのだ。
そして2か月が過ぎた。
Nちゃんが隣にいる毎日にも少し慣れ、緊張することはなくなった。
しかし彼女が好きだという気持ちだけは少しも色褪せることはなかった。
ある日の学校の帰り、歩きながら思い切って彼女と手をつないでみた。
彼女は強くギュッと握り返してくれた。
2学期の終業式の日、クリスマスも近かったことで彼女は贈り物をくれた。
自分の髪を束ねていた緑色のリボンだった。
色とかそのもの自体にどういう意味を込めてくれたのかは忘れてしまったが、
もらうときに何かメッセージを話してくれた記憶はある。
そして冬休みのある日、私はNちゃんと初めてのキスを交わした。
年明けのバレンタインデーにも彼女は手作りのチョコレートをくれた。
リボンもチョコの容器も私は大切にしまっておいた。
そして2年生になり、彼女とはクラスが離れてしまった。
4月のある日、中学から仲が良かった男子がやってきて気になることを言った。
「この前お前の彼女が他の男子と歩いて帰ってるとこ見たけど・・・大丈夫なん?」
私は絶句した。
表に出さないようにはしたものの、心は明らかに動揺していた。