ピザ屋の裏話その④ -客なら何してもいいのか?-
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ピザを頼む客にはもちろん常連もいるが、1回きりに終わることも多い。
そういう客とデリバリーの顔合わせは一期一会ともいえる。
毎回違う客と次々に顔を合わせてピザを届け代金を受け取る。
当然いろんな客がいて、中にはあまりに態度が悪くてこちらがキレるのもいる。
そんな客とのしたくない出会いの話だ。
注文を受けた私は客の家へと車を走らせた。
到着してチャイムを鳴らしてもなかなか出てこない。
ここで怒りゲージは30%だ。
注文したんなら家にいるはずだろ、さっさと出てきてくれよ。
ようやく出てきたと思ったら小太りのハライチ澤部っぽい男だ。
だが顔は澤部のように柔和な感じではまったくなく悪人面だ。
澤部はこちらを一瞥して偉そうに
「いくらよ?」
金額を答えると、そこからまた財布を取りに室内へと戻っていく。
ここで怒りゲージは70%だ。
玄関まで出てきたんなら金持って来てんじゃないんかい。
ピザ屋が届けに来たってのチャイム押したときにわかってんだからさ。
それでも普通に金払ってくれるんならいいが、そうではなかった。
澤部はさんざん時間をかけた挙句に万札を出し、下駄箱の上に投げたのだ。
もはや怒りゲージは余裕の100%超えだ。
ピザを注文した客が金を払うときに守ってほしいマナーというものがある。
あくまでデリバリーからみたマナーなので一方的なものだが。
一番いいのは玄関開けたらもう1円単位で代金が準備されていることだ。
注文時に金額は伝えているのだから十分可能だ。
次は頑張ったけどちょっとお釣りがでちゃうパターン。
2369円なら2400円準備してくれているときなんかがそうだ。
これくらいなら全然普通だし、準備してくれている時点で非常に良いお客さんだ。
持ち合わせがなくて万札になっちゃっても別にいい。
その場で万札しかないことがわかったとしても
人として普通に渡してくれればこちらも礼節を持って対応するまでだ。
しかし澤部はそうではなかった。
準備はしてないわ、無駄に時間はかけるわ、結局万札だわ、しかも投げてくるわ。
こっちもまだ20過ぎの若造で、おまけに気分が顔に出てしまいやすい性格だった私は
澤部に対してお釣りを下駄箱に叩きつける、というおよそ客商売として
あるまじき蛮行に及んでしまった。
怒りに任せた態度を取った私が店に帰るとマネージャが待っていた。
既に澤部から
「あのデリバリーの態度はなんだ!」
とクレームが入っていたらしい。
私は事情を説明したが、やったことは客商売としては失格である。
怒りに震えるのは仕方がないが、決して態度に出してはいけない。
澤部の客としての対応がいかに非人道的だったとしてもだ。
つくづくこのときは私は客商売には向いてないな、と思った。
世の中いい人ばかりではないのだから。
こんな感じの話がいくつかあるので、書いていってみようと思う。