人生の雑記帳

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3.11を経て考える「放射能」という言葉 -なぜ放射線は危険なのか?-

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私はあまり重い話は好きじゃないんだが、ずっと気になっていたので書くことにした。

 

今年で東日本大震災から10年目の3.11がやってきた。

誰もが知ってると思うが、このとき大きな関心事だったのが原発事故だ。

なぜ原発事故がそんなに大きな問題になったのか。

単に発電所津波で壊れて止まりました、というだけでは済まなかったからだ。

「ベント」による放射性物質の大気放出がそれだ。

 

電気を作り出す「発電」というのは簡単にいうとタービン(回転羽)を回し、

回転する力を電気エネルギーに変える、というやり方で行われている。

タービンをいかに小さなエネルギーで効率よく回せるかが発電のカギだ。

火力発電ならば燃料を燃やして出る水蒸気の力を使ってタービンを回す。

原子力は燃料を燃やす代わりに、炉の中で核分裂物質を連続的に核分裂させる。

核分裂で放出される熱エネルギーは莫大なので、

原発はこの熱で水蒸気を発生させてタービンを回す。

水蒸気を使う点は同じだが火力よりもずっとエネルギー効率がいい。

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代表的な核分裂物質にはウランがあるが、これに一定以上のエネルギーを与えると

勝手にどんどん核分裂が連鎖的に続く、所謂"臨界"状態になる。

この臨界を人為的に作り出しているのが原発というわけだ。

広島や長崎に投下された原爆も基本的な理屈は同じ。

人間が制御して緩やかに臨界を発生させれば発電に使えるし、

短時間で一気に連鎖させれば殺傷兵器にもなるという違いだ。

そして国は使用済み核燃料の問題や事故のときのリスクをあまり表に出さず

原子力政策を推し進めてきた。

 

まあこのへんの話は世の中の人は結構知ってるんじゃないかとは思う。

私が気になっていたのは原発事故の後の世間の"怖がり方"だ。

よく聞かれたのは「放射能が怖い」というものだ。

確かに目に見えないし人体には有害なものだから怖いのはわかる。

広島や長崎の原爆症のことだって知ってる人が多いのだから。

でもニュースキャスターやレポーターなんかがいう

放射能があちこちに散らばって・・・」

放射能の強さを測ると・・・」

みたいな表現が気になって仕方がなかったのだ。

放射能というのは放射性物質放射線を出す能力のことだ。

だから放射能に単位はないし散らばるものではないし強さを測れるものでもない。

そもそもメディアの言葉の使い方がおかしい。

怖がるなら正しく怖がる方がいい。

撒き散らされたのは放射能ではなく「放射性物質」であり、

本来怖いのはそれらの放射性物質が出す「放射線」なのだ。

 

では放射線とは一体何なのか、そしてなぜ危ないのか。

放射線とは「電磁波」のうちのひとつだ。

電磁波には目に見えるものと見えないものがある。

目に見えるものは「光」だ。

見えるから可視光ともいう。

可視光の中で、最も波長の長い色は赤色、最も波長の短いものは紫色に見える。

虹の各層は波長の順に並ぶので、この2色が層の両端にくる。

波長というのは、波が1回振動してもとの場所に戻ってくるまでの長さのことだ。

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そして赤色の光より波長が長くなると赤外線になり、

赤外線よりもさらに波長が長いものがTVやラジオなんかで使われる電波だ。

逆に紫色より波長が短いものが紫外線と呼ばれ、

紫外線よりもさらに波長が短いものの中に放射線が含まれる。

放射線にはα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、X線などの分類がある。

電磁波とはこれらを総称したものであり、波長別に図で表すとこうなる。

 

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ではなぜ電磁波の中で放射線が危険視されるのか。

それは上で出てきた「波長」が関係している。

電磁波はこの波長が短くなるほど、持つエネルギーが強くなる性質がある。

エネルギーが強いということは、人体に当たった場合に

体に変化をもたらす可能性が強くなるということ。

身近な例でいうとエネルギーの強さは紫外線>赤外線だ。

紫外線はお肌の敵みたいに言われるが、赤外線は悪く言われないのはこのためだ。

放射線はこれより波長がずっと短いので、さらに人体には危険なわけだ。

健康診断でレントゲンを撮影するときにX線を浴びるが、あれは一瞬だから許される。

あれでも累積すると体に良くないから、撮影する期間と回数の上限が決まっている。

撮影する放射線技師の人は線量計を着けて累積被ばく量を管理しないといけないし、

余計な被ばくを防ぐために撮影時は必ず部屋の外に出る。

そうしないとあっという間に累積被ばく量が管理値を超えてしまって

仕事ができなくなるからだ。

こういう性質の放射線を出す物質が大気中に放出されたのが原発事故だ。

 

でも音は離れれば減衰して聞こえにくくなるように、

放射線放射性物質から離れるほど受けるエネルギーは小さくなる。

放射性物質が至るところにあるような場所は線量計で管理しないといけないが、

原発から離れた場所でホットスポットがあったからといって

大騒ぎするのはちょっと違うんじゃないかなと思う。

目に見えないから心配になる気持ちはよくわかるが、

ごくわずかな放射性物質があったとしても出す線量は小さいし、

体に長時間密着させているわけでもない。

ポケットに常に放射性物質を大量に入れて生活してるわけではないのだ。

そもそも人間は太陽が出す放射線を毎日のように浴びている。

どこまでが安全でどこからが危険なのかはわかっていないし、

私は現在関西にいるので軽々しくは言っちゃいけないかもしれんが、

あまり神経質になりすぎなくてもいいんじゃないかな、と思ってる。

事故直後にニュースですべての食品を検査してくれないと安心できない、と

インタビューに答える女性がいたが、冷静さをちょっと欠いてるかなと思ったものだ。

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私は福島産の米や農産物だって普通に買うし、気にもならない。

そりゃ放射性物質が付着してる可能性がないとはいえないが、

除染もやって検査もやってるわけで、例えあってもごく微量だと思うし、

生きてる間に影響が出る量とは思っていない。

むしろお隣の大国で生産された野菜とか加工品の方が怖いくらいだ。

でもそう思ってくれない人が多いから全量検査とかやってるんだよな。

検査してても買ってくれない人がいるんだから現地の生産者は本当に大変だ。

まあわかっていないことが多いからこそ人それぞれの判断になるわけで

私の考え方が正しいとも限らないから難しい問題なんだろうなあ。