人生の雑記帳

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甦る殺気と緊張感!1995.10.9新日本プロレスvsUWFインターナショナル全面戦争。

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私が見てきたプロレスの歴史的大会の3つのうち最後の1つがこれだ。

開催が決まったのが同年8月と東京ドームの試合としては異例の遅さだった。

両団体の間の話し合いで急遽決まったためだったのだが、

チケットがバカ売れするのは目に見えていた。

メインが武藤敬司高田延彦のシングルと発表されていたからだ。

この2人は高田が第1次UWFからの出戻り時代に対戦経験があるが、

1995年当時の高田はUインター旗揚げ後に北尾やベイダーを倒し、

「最強」を標榜しているUインターの絶対的エースだ。

対する武藤も新日本の事実上の"顔"だ。

両団体のトップ同士が東京ドームのメイン、しかもシングルで戦うのだ。

大会の性質上、絶対に不透明決着にはならない。

そしてドーム内が凄い雰囲気になることも予想できていた。

ここに至るまでの両団体のトラブルやイザコザ、喧嘩腰の罵り合いが

ファンをこれ以上なく煽っていたからだ。

前の2つと違ってこちらは新日本のTV中継がちゃんとある。

相手のUインターにTVがついていないからだ。

それでも私は肌で感じ取らないとダメだ、と絶対見に行こうと決め、

またしても北海道から参戦した。

 

当日のドーム周辺は異様な盛り上がりを見せていた。

当日券を求める大行列。

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新日本とUインターのファン同士のトラブルもあちこちで起こった。

久しく新日本から失われていた"殺気"が感じられる雰囲気がそこにはあった。

このムードを味わえただけでも見に来た甲斐があったと思える。

試合開始1時間ほど前にドームに入ったのだが、ほとんどの席が既に埋まっている。

当日は東京ドーム興行としては異例の月曜日。

準備期間の短さと合わせて、客が集まりにくい要素が揃っているにもかかわらず、だ。

平日の試合開始前にプロレス会場の席がすべて埋まることなんてまずない。

そして当日券を求めるファンがあまりにも多かったため、

当初開放予定がなかった外野席にまで急遽観客を入れることになった。

それだけファンの期待が大きかったということだろう。

 

ドームを埋めたファンのほとんどは新日本推しだった。

それまでのいきさつを知っていればそれも頷ける。

とにかくUインターは無礼ともいえる態度で新日本に喧嘩を売り続けていたからだ。

ベイダーの引き抜きや1億円トーナメント事件、そしてそのたびに報道される

選手兼フロントだった宮戸優光の言動がファンの神経を逆撫でする(左端が宮戸)。

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まあこれもプロレスの演出の一部だとすれば役者として一流だ。

 

そしてついに試合が始まった。

事前のセレモニーをはじめその他の演出はなにもなし。

"普段着"であることが逆に緊張感を高める。

選手入場ゲートも新日本とUインターに分かれていて対決ムードを盛り上げる。

第1試合から選手そしてファンはこのうえなくエキサイトしていた。

特に金原弘光に対する石沢常光の態度が象徴的だ。

「お前なんか絶対に認めねえ」と言っているかのようだ。

 

異彩を放っていたのが獣神サンダー・ライガー佐野直喜のシングルだ。

ライガーが佐野を純プロレスに誘い、佐野もそれに応じた。

佐野のおよそUWFの選手らしからぬ動きにファンは敵味方を忘れて声援を送った。

もともとこの2人は新日本のジュニア戦線でしのぎを削った仲だ。

佐野がこういう試合もできることはファンだってわかっている。

UWFスタイルに固執しなかった佐野と、それを引き出したライガー

対抗戦の中で純粋に楽しめる唯一の試合だった。

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前半でこの日一番の注目は長州力安生洋二戦だ。

結果は皆わかりきってはいたが、"200%勝てる"等ビッグマウスを連発していた

安生を長州がどう気持ち良く料理してくれるのか、に興味が集まっていた。

そして期待通り長州は安生に何もさせず、ラリアット⇒サソリ固めで終わらせた。

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時間にして5分足らず。

まあこういう"お仕置き"的な試合は長州の最も得意とするところだろう。

 

そして試合は進み、いよいよメインの武藤-高田戦だ。

まずこの対決でいえるのは、2人とも入場シーンだけで金が取れるな、ということだ。

高田のテーマ曲はロッキーの「トレーニンモンタージュ」だが、

これがドームという舞台と高田の雰囲気に実に合っていて、最高にカッコいい。

対する武藤も新テーマ曲「トライアンフ」に乗せて、観客にアピールしながら入場。

アメリカンスタイルながら嫌味を感じさせないのが天才というべきか。

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試合は高田のキックとサブミッションに付き合いながら武藤が持ち味を如何なく発揮。

高田は武藤のムーンサルトを受けないなど、こだわりを垣間見せる。

そして最後はドラゴンスクリューからの足四の字固め。

フィニッシュが生粋のプロレス技であったことが新日本の完全勝利を意味していた。

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試合後、花道を引き揚げる高田に対してファンからの痛烈な野次が突き刺さった。

「高田!前田が泣いてるぞ!!」

TV中継の音声にもしっかり拾われていたので、記憶にあるファンも多いだろう。

第2次UWFが三派に分裂したとき、唯一UWFの3文字を背負ったUインター

前田が理想郷として旗揚げしたUWFが音を立てて崩れた瞬間だった。

 

Uインターとしては、この対抗戦に同意した時点で先がないも同然だった。

夢の懸け橋の記事でも書いたが、対抗戦は麻薬と同じなのだ。

だがUインターは経営難もあって、禁断の果実に手を出さざるを得なかった。

こうなるとUインターとしては負けブックを飲まざるを得ない。

一時的な利益は得られるが、団体としてのイメージダウンは避けられない。

 年明けの1.4東京ドームのリマッチでは高田が逆十字で勝利するが焼け石に水だ。

それくらい10.9における武藤戦の四の字による敗戦のインパクトが大きすぎた。

 

Uインターはもともと宮戸がブレーンとなって、猪木全盛期の新日本を理想として

高田を絶対エースに立て、プロレス界に話題を提供し続けてきた団体だ。

1億円トーナメント構想における、各団体エースへの一方的な招待状の送付などは

間違いなく反発が来ることを想定して仕掛けている。

業界内にもファンにも多くの敵をつくった団体だったとは思うが、

爆弾を落とす団体があった方がプロレス界が盛り上がるのもまた事実だ。

だが昭和の新日本とは違い、Uインターの試合は月一であり、ドラマ性に乏しい。

ファンも成熟しており、猪木のカリスマ性を高田に求めるのはやや無理があった。

 

私も一ファンとしてUインターがプロレス界に作り出す渦を楽しんでいた。

昭和のプロレスを見てきたファンなら、わかる人が多いのではないだろうか。

特に北尾をハイキック一発でKOしたときは、プロレス界の中心にいたといっていい。

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一瞬だけだったがプロレス界に確かに爪痕を残したUインター

最後は新日本という大波に飲み込まれ、その役目を終えた。