人生の雑記帳

思ったこと。気付いたこと。疑問。後悔。思い出。忘れたくないこと。そんなことを書き留めよう。

プロレス夢のオールスター戦! 1995.4.2「夢の懸け橋」のこと。

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私は平成に入ってプロレス界の歴史的な東京ドーム興行を3つ見てきた。

1つ目は既に書いた1990.2.10の新日本と全日本の対抗戦。

そして2つ目がこの記事で書く、1995.4.2「夢の懸け橋」だ。

複数の団体が参加するので、TV中継は間違いなく、ない。

そしてビデオ発売も「誰が利益をもらうのか」で揉めるはずなので多分ない。

こりゃ見に行かないといかん、ということでチケットを押さえた。

 

この大会はプロレス団体ではなく、出版社であるベースボールマガジン社が主催した。

週刊プロレスを世に出している会社だ。

この「週プロ」の当時名物編集長だった"ターザン山本"こと山本隆司氏が

仕掛けて実現した大会だったのだ。

当時の週プロは山本氏の独自のカラーが非常に強く出ていた。

自分の意に沿わない団体は容赦なく批判を展開した。

第2次UWFを神格化し、新興SWSを金満と猛バッシングしたのも週プロだ。

そのため熱烈な読者が多かった半面、アンチも多く生み出した。

こういう週プロの姿勢に危機感を抱いた団体側は取材拒否、という強攻手段に出た。

全日本やSWS、WARなどが実際に取材拒否を実行した団体だ。

そんな良くも悪くも業界内で影響力を持つ存在だった週プロが動いたのだ。

 

当時は空前の多団体時代だった。

その数は日本国内に30とも40ともいわれた。

数に入れていいのか微妙な零細団体もあったため、数がはっきりしなかったのだ。

オールスター戦といえば他団体の選手同士がリングに上がって戦う対抗戦を想像する。

しかし、さすがに第三者である出版社が主催する大会だ。

戦えば必然的に勝ち負けが発生する。

どの団体もわざわざ出場して"負けブック"を飲まされるのはゴメンだろう。

かといって引き分けばかりではファンに不満が残る。

ここで

「各団体が1カードずつ提供した試合を順に並べる」

というやや苦肉ともいえる策が浮上した。

なるほど、これならばカードの新鮮味はないが、各団体のメンツは保たれる。

どのカードを提供するかも各団体に委ねてしまっていい。

自分たちをアピールするためにより興味をひくカードを、と団体側も考えるからだ。

この大会には結局13団体が参加を表明した。

当時取材拒否中だった天龍率いるWARは当然の如く不参加。

そしてあろうことか同時間帯にすぐ隣の後楽園ホールで自団体の興行をぶつけてきた。

週プロへの宣戦布告だ。

後楽園もアンチ週プロやコアなWARファンが集まり、満員御礼。

ライバル誌の週刊ゴングはドームよりWAR後楽園を詳報し対決姿勢を打ち出していた。

当時のプロレス界は冬の時代を乗り越え、かなりの盛り上がりを見せていたのだ。

 

試合は、女子⇒男子の順で、さらに各団体の歴史の浅い順に行われることに決まった。

女子は、JWP ⇒ LLPW ⇒ 全日本女子。

男子は、剛軍団 ⇒ IWAジャパン ⇒ パンクラス ⇒ 藤原組 ⇒ みちのく

⇒ リングス ⇒ UWFインター ⇒ FMW ⇒ 全日本 ⇒ 新日本だ。

結果的にだが、この「カード提供方式」は成功だったと思う。

カードの良し悪しよりも、ファンが様々な団体のカラーを知ることができたからだ。

対抗戦は確かに盛り上がるが、団体の持ち味まではなかなかわからないものだ。

私も老舗2団体以外はほとんど見に行ったことがなく、非常に新鮮に映った。

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女子プロレスは3団体の個性が出ていて、その面白さもよくわかった。

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特に第1試合のJWPの8人タッグマッチはドームの空気を本当によく温めたと思う。

 

剛軍団では普段彼らをあまり見ないファンも一体になって「プロレスバカ」の

作り出す世界を目一杯楽しんでいた。

 

IWAジャパンはハチャメチャなデスマッチだったが爪痕はしっかり残したと思う。

 

U系4団体はやはりドームには向いていないのか、アピールがやや弱いかなと感じた。

だがリングス前田日明の入場時の割れんばかりの「マエダ」コールだけは別だ。

プロレスファンの前田に対する期待感はやはり根強いものがあったのだ。

 

逆にドームに最もマッチしていたのがみちのくだ。

6人の個性がわかりやすく、お約束ムーブの面白さもしっかり伝わった。

そして空間を最大限に使うルチャリブレの神髄を見せてくれた。

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期待外れに終わったのがFMW

グレート・ニタポーゴ大王の有刺鉄線電流爆破マッチだった。

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第一にリングが別になってしまったことが痛かった。

アリーナ中央にある他団体と同じリングでやろうとすれば、

有刺鉄線への貼り替えや爆薬の設置で多くの時間を費やし、間が空いてしまう。

せっかくここまで作り上げてきたムードが台無しになるおそれがあった。

そこで左翼スタンド前に予めFMW専用のリングを設営しておき、

試合直前までベールに包んで隠しておく、という方法を採ったのだ。

時間的にはスムーズになるのでこれは致し方ない。

しかしリングの位置が端っこすぎて観客からはリング上の攻防がよく見えず、

ほとんどのファンがバックスクリーンの映像で確認せざるを得なくなった。

ファンが既にこの試合形式に慣れてしまっていたことも大きかった。

これでは会場が一体になることはできない。

さしたる盛り上がりも感じられないまま、試合は終わった。

象徴的だったのは、ニタが退場している最中に次に登場する全日本勢に対して

「ゼンニッポン」コールが沸き起こったことだ。

FMWと大仁田にとってこれは屈辱だっただろう。

 

そして、いよいよこの日の目玉ともいえた全日本だ。

三沢光晴川田利明田上明、小橋健太、スタン・ハンセン、ジョニー・エース

による6人タッグマッチ。

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2.10東京ドームの後、全日本は選手を他団体のリングに一切上げなかった。

馬場が採った、所謂「鎖国政策」だ。

自団体の試合内容の完成度をひたすら高め、付加価値を上げていったのだ。

他団体との交流は"劇薬"だ。

一時的には大きな効果があるが、飽きられるとファンはそれを上回る刺激を求める。

際限がなくなり、もう自団体単独興行に戻れなくなっていく。

馬場はおそらくその怖さをわかっていたのだろう。

この試合の注目度が圧倒的に大きかった理由は、普段全日本を見ないファンに対して

その凄さをぜひアピールしてほしい、という全日本ファンの期待だったと思う。

他団体と決して交わらない全日本が、実は中でこんな凄い試合をしている。

それをすべてのプロレスファンにわかってほしかった。

1人ずつの入場と、それに対するファンのコールの大きさがその期待値を示していた。

あの地鳴りのような大歓声は鳥肌が立つくらい凄いものだった。

かくして6人の選手たちはいつも通りの試合を展開してくれた。

30分目一杯使って時間切れ引き分け。

勝ち負けよりも"30分も楽しませてくれた"という満足感が遥かに大きい。

この大会に試合を提供したことで、全日本のステージはまた1つ上がった。

 

トリを務めたのが新日本。

橋本と蝶野のシングルだ。

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やはり全日本の後、というのはやり辛かっただろう。

ファンも全日本勢が見せた試合の余韻に浸っている。

それを上回るものを見せなくてはいけなかったのだが、結果そうはならなかった。

十分合格点の内容ではあったが、1つ前のインパクトにやはり食われた。

ちょっと気の毒だなとは思ったが、試合順の関係でありこれは仕方がない。

よく頑張った方だと思う。

 

私はこの大会に北海道から参戦した。

北海道にはスギ花粉がないので楽だったのだが、東京に着いた途端大変だった。

そのため前半はなかなかリング上に集中できなかったのだが、

剛軍団のとき「ショアッ」をやってるうちに楽になってることに気付いた。

「ショアッ」はアレルギー反応をも抑えてくれるのだろうか?