人生の雑記帳

思ったこと。気付いたこと。疑問。後悔。思い出。忘れたくないこと。そんなことを書き留めよう。

女の子の話その⑧ -Nちゃんへの懺悔-

↓ 前回のお話 ↓  

donchang.hateblo.jp

少し経ってから、なぜNちゃんは私への興味を失ったんだろう?と考えた。

本当に彼女だけが悪かったんかな?と冷静になれたからだ。

 

デートが学校の行き帰りの時間だけではやはりマンネリを招く。

おそらく彼女はそう感じていたのだと思う。

でも私はそうではなかった。

だから平日が待ち遠しくて仕方がなく、土日が早く終わらないかなとさえ思った。

そんな日常でも満足していたことも事実だが、それ以外の引き出しもまたなかった。

休みの日に会ってデートする?

どこで?

何すればいい?

全然思い浮かばなかったのだ。

f:id:Donchang:20210307165300p:plain

一度だけ彼女から自宅に電話をかけてきてくれたことがあった。

当然うちも自宅なのでだいたいは親が出る。

私が彼女に電話しにくかったように、彼女もきっと葛藤はあっただろう。

でも勇気を出して電話してくれたのだ。

 

「なんか声が聞きたくなったの」

 

これ以上ない最高に嬉しい理由だ。

f:id:Donchang:20210226232505p:plain

だが私は家族がいることもあって気恥ずかしく、また明日会えるんだから、

という理由をつけて話もそこそこに受話器を置いてしまった。

彼女は会うとたびたびストレートに「大好き!」と想いを言葉で伝えてくれたのに、

私は恥ずかしくて気の利いた言葉を言ってあげられなかった。

f:id:Donchang:20210228173013p:plain

彼女がくれた贈り物に対してもお礼こそ言えど、その気持ちを形にして返せなかった。

何をあげて良いかもわからず、自分が選ぶもののセンスにも自信がなかったのだ。

どれもこれも完全に自分に都合が良いだけの言い訳だ。

彼女はきっとそういうところにも刺激のなさを感じていたのだと思う。

でも当時の自分にはその自覚がなかった。

ただ彼女のことが好き、という気持ちだけが武器の"一本足打法"だった。

彼女を楽しませてあげたい。

彼女を喜ばせてあげたい。

そういう視点がまったく欠けていた。

だから私の「彼女のことが誰よりも好きだ」という強い想いは、

きっと私が思っているほどNちゃんには伝わっていなかったのだろう。

「この人は本当に私のことを大切に想ってくれているのかな」

と疑問だったのかもしれない。

 

振り返るとNちゃんの前では格好をつけることばかりを優先していた。

教室では周りの目があるので、彼女の前ではできるだけクールな自分を演じていた。

そんな自分の姿は、2人きりのときもあまり変わっていなかった。

弱みを見せたって良かったんじゃないかとも思うし、

もっとONとOFFをはっきりさせるべきだったのかなあとも思える。

 

人は大切なものを本気で手に入れるためには懸命に悩み、努力する。

私もそうだった。

しかし一度手に入れてしまうとそこで満足してしまった。

例えは悪いが"釣った魚に餌をやらない"ということと同じだ。

Nちゃんは"釣った"後も私にちゃんと餌をくれていたのだから尚更だ。

本当はそれまで以上に、熱量を維持向上させるために努力しなくてはいけない。

一途に想い続けることだけが誠実とは限らない。

決して"愛があれば大丈夫"ではないのだ。

 

Nちゃんとのことを綴っていると、どうも気分が沈んで仕方ない。

あのときに味わった辛さが最近のことのように甦ってくる。

でもOKをもらえたときに感じたこれ以上ない幸福感もまた忘れられない。

悲喜こもごもあるからこそ尊い思い出になって心に残っているのかもしれない。

 

上にも書いたが、Nちゃんが私から去った理由は今なら察しがつく。

彼女に「飽きた」などと感じさせた私が悪かったのだ。

おそらく彼女は別れを切り出す際にもいたずらに長引かせず、

私にちゃんと筋を通そうとしてくれた。

彼女なりの誠意だ。

私とは釣り合わないくらいモテる子だったとは思うが決して軽い子とは思わない。

無理矢理にでも 自分を納得させるため、という大義名分があったとはいえ、

彼女にすべての責任を負わせて楽になろうとしたことは本当に後悔している。

 

Nちゃん、あのときは傷つけるようなことを言ってしまって本当にゴメン。

私に大切な思い出をたくさんくれたこと、そして短い間だったけど

私の彼女でいてくれたことに感謝しています。

 

ありがとうNちゃん!

女の子の話その⑦ -Nちゃんとの別れ-

↓ 前回のお話 ↓  

donchang.hateblo.jp

4月に入ってすぐ、私はNちゃんとちょっとしたすれ違いで小さな喧嘩をしていた。

そのため2週間ばかり顔を合わせていなかった。

そのさなかに友人からの忠告があったのだ。

 

胸騒ぎを覚えた。

その後すぐ、Nちゃんが私のクラスにやってきて久々に話しかけてくれた。

仲直りのきっかけにできないかな、私はそう思ったのだが、彼女は俯いている。

 

「今日の帰りに話したいことがあるから」

 

良くない話であることはだいたい想像がつく。

友人が話してくれたこととも多分関係があるのだろう。

その日の夕方、幾度も彼女と2人で時間を過ごした公園に向かった。

そして単刀直入に告げられた。

 

 「他に気になる人がいるの・・・お付き合いを考えさせて」

 

恐れていた通りの結果だった。

だがここで拒否してしがみついても惨めなだけだ。

 

「わかった、結論が出せたら教えて」

 

答えは99%出ていると思ったが、彼女の決断を待つほかなかった。

 

そして数日後にもう一度、彼女から呼び出された。

 

「考えてみたんだけど・・・やっぱり別れてほしい」

「どうしてなのかできれば教えてもらえないかな?」

「一緒にいることがなんだか飽きてきたように感じるの」

 

彼女の言う"気になる人"というのは、彼女の部活の仕事を手伝いに来てくれた

同級生で、ちょうど私との関係に疑問を抱き始めた頃に知り合ったらしい。

そして私と喧嘩をしたタイミングもあり、距離が縮まったのだろう。

彼もまたきっと彼女のことが好きでお互い惹かれ始めていて、

もしかしたら彼からの告白まで受けていたのかもしれない。

それでNちゃんは私との関係を清算しよう、と考えたみたいだ。

結論は出された。

 

「じゃあ元気でね」

 

そう言い残して公園を走り去るNちゃんを私は黙って見つめるしかなかった。

その夜、私は人生で初めて心の底から泣いた。

f:id:Donchang:20210226231251p:plain

 

だが、当時の私は自分の悪かったところに気付けないままでいた。

具体的に自分のどこがいけなかったのかわからない。

わからないから自分の中で素直に受け止められない。

私はなんとかして心のわだかまりを消化してしまいたいと焦っていた。

事の顛末を知った周りの友人たちは「お前は悪くない」と口々に言う。

内情を知らないのだから無理もない。

彼女が一方的に裏切って他の人に乗り替えたようにしか見えていなかったんだろう。

私もそういう声を都合よく解釈し、彼女を悪者にしてしまうことで収束を図った。

そうだ、一方的に心変わりした彼女が悪いんだ。

そう思い込ませることにした。

そして、彼女にもその思いを伝えないと終わらない気になっていた。

私は自宅の電話の受話器を手にしていた。

あれだけ忌避していたのに、このときは彼女の自宅へ躊躇なく電話していた。

そのときは彼女の親が出ようが気にならなかった。

それだけ早く心をリセットしたい思いが強かったのだと思う。

電話口に出た彼女に私は強めに言葉をぶつけた。

 

「あんたが・・・そんなに軽い子だとは思わなかったよ・・・!」

 

そんな意味のことを言ったように思う。

彼女は何も言わなかった。

電話を切った後、私はようやく自分の気持ちに区切りをつけることができたと思った。

でも本当はずっと変わらず好きなままの気持ちになんとか蓋をしただけだ。

その下では彼女を想う心の火は変わらず燃え続けていた。

あとは時間が解決してくれるのを待つしかなかった。

 

こうしてNちゃんとの夢のような時間は儚く終わりを告げることになった。

だが、彼女と交際していたときの私には多くの反省点がある。

そのへんのことを別記事で少し振り返ってみようと思う。

女の子の話その⑥ -夢のような日々、そして暗転-

↓ 前回のお話 ↓ 

donchang.hateblo.jp

晴れてNちゃんとの交際がスタートした。

「ずっと大好きだったNちゃんという彼女がいる自分」という現実を噛みしめる毎日。

これだけで何杯でも御飯が食べられそうだ。

かといって特段行動様式が変わるわけではない。

お互いにまだ16歳というちょっと大きいだけの子供だ。

部活終わりに一緒に帰ることが共有できる大切な時間だった。

所謂、"放課後制服デート”だ。

f:id:Donchang:20210226200134p:plain

そのうちまっすぐ駅に向かわず、途中の公園で一緒に過ごしてから帰るようになった。

そしてさらに朝の登校時にも、車両とドアの位置を決めて待ち合わせるようになった。

こうしてできるだけ2人の時間を増やしていった。

どこからどんな情報が伝わっていたのか知らないが、あのマネージャのJちゃんが

「あんたたち、1年生のカップルの中で2番目に評判いいよ!」

という、謎の序列を教えてくれた。

微妙な評価だが、2番目というのが妙にリアリティがあり、

例えリップサービスだとしても素直に嬉しく思った。

今更だが「1番目」が誰だったのかが気になって仕方ない。

 

付き合い始めて間もなく、Nちゃんは私にあるコンプレックスのことを話してくれた。

先天的なものなのか、ケガがもとなのかはわからないが、片目の下だけ色が

少し違っていて、俗にいう"青アサ"や"青タン"のようになっていたことだ。

もちろん私も気付いてはいたが、きっと早目に私に確認しておきたかったのだと思う。

気にして当然だろう。

隠せる場所ではないし年頃の女の子ならなおさらだ。

たまに治療のためか目の下にガーゼや絆創膏を貼っていた日もあったのを覚えている。

クラスの一部の男子が彼女の目について、心無い陰口を言っているのを

耳にしたことがあり、まるで私がけなされた気分になったものだ。

私は彼女の目のことなどまったく気にならなかったが、

彼女がそのことを気にしていつも下を向いているような子だったら

私は好きにはならなかったんじゃないかと思う。

それどころか、本人はきっと気にしているはずなのに、それをまったく感じさせず

明るく自然に振る舞う彼女にますます惹かれた。

私はそういうNちゃんを"まるごと"好きになったのだ。

 

そして2か月が過ぎた。

Nちゃんが隣にいる毎日にも少し慣れ、緊張することはなくなった。

しかし彼女が好きだという気持ちだけは少しも色褪せることはなかった。

ある日の学校の帰り、歩きながら思い切って彼女と手をつないでみた。

彼女は強くギュッと握り返してくれた。

f:id:Donchang:20210226200145p:plain

2学期の終業式の日、クリスマスも近かったことで彼女は贈り物をくれた。

自分の髪を束ねていた緑色のリボンだった。

色とかそのもの自体にどういう意味を込めてくれたのかは忘れてしまったが、

もらうときに何かメッセージを話してくれた記憶はある。

そして冬休みのある日、私はNちゃんと初めてのキスを交わした。

年明けのバレンタインデーにも彼女は手作りのチョコレートをくれた。

f:id:Donchang:20210226200206p:plainf:id:Donchang:20210226200158p:plain

リボンもチョコの容器も私は大切にしまっておいた。

 

そして2年生になり、彼女とはクラスが離れてしまった。

4月のある日、中学から仲が良かった男子がやってきて気になることを言った。

「この前お前の彼女が他の男子と歩いて帰ってるとこ見たけど・・・大丈夫なん?」

私は絶句した。

表に出さないようにはしたものの、心は明らかに動揺していた。

女の子の話その⑤ -告白、そして交際-

↓ 前回のお話 ↓

donchang.hateblo.jp

女神の名はKちゃんといった。

彼女はNちゃんと非常に仲が良く、休み時間は2人はだいたい一緒だ。

なので私はKちゃんとも非常に仲が良かった。

Nちゃんとタイプが違い、のんびり喋るちょっと上品なお嬢さん、という感じの子だ。

私は意識しすぎて教室でNちゃんに気軽に話しかけられなくなってしまっていた。

だから休み時間になると、私は女の子といえばKちゃんと話をする機会が多くなった。

Kちゃんと一緒にいると以前ならNちゃんもその輪に入ってきたのだが、今はこない。

Nちゃんもちょっと意識はしていたみたいだ。

そんな状況の中、Kちゃんが不意に私に言った。

「あんたあの子誘って一緒に帰ったんでしょ?」

「『何も言ってくれないのかな』ってガッカリしてたよ?」

Kちゃん、それ本当!?

私は努めて冷静を装って確認した。

つまりNちゃんは私が告白するのを待ってくれていた。

そういうことだ。

答えが怖くてチャンスを生かせずにいた私にとってこれ以上ない情報だった。

もういたずらに時間をかける必要はない。

私はその日の清掃時間、クラスのみんながバラけた隙を見てNちゃんに伝えた。

「放課後、4時に教室の前で待っててもらえる?」

Nちゃんは黙ってうなずいた。

そして授業が終わった。

私は部活の準備を急いで終え、時間に合わせて教室へ向かった。

Nちゃんは約束通り待ってくれていた。

もう躊躇する理由はない。

私は着いて息を整える前にNちゃんに自分の気持ちをストレートに伝えた。

「ずっと好きだった・・・だから付き合ってもらえないかな」

「うん、私も」

これまでの私の人生でこれほど幸福感を感じた瞬間はいまだかつてない。

16歳という年齢、学校という舞台、若さゆえの数々の困難がそう感じさせたのだろう。

目の前がバラ色になる、とはきっとこういうことを言うのだなと思った。

本人によると、1学期の途中から私のことを意識してくれていて、

体育祭の打ち上げの席で自分の気持ちがわかったの、と話してくれた。

 

この日、Nちゃんがついに私の初めての「彼女」になってくれたのだ。

f:id:Donchang:20210226225957p:plain

 

女の子の話その④ -告白への道のり-

↓ 前回のお話 ↓ 

donchang.hateblo.jp

クラスメイトには隠そうとして逆にバレてしまったが、

部活の連中にはNちゃんに対する私の気持ちはしっかり伝えていた。

そしてある土曜日、練習前に男ばかりで集まっていたところに、

マネージャのJちゃんがやってきて話の輪に入ってきた。

「それじゃ私が間に入ってNちゃんて子に話してあげようか?」

JちゃんとNちゃんは出身中学もクラスも部活もすべて違うため、まったく接点がない。

にもかかわらず困っている私のために手を貸してくれるというのだ。

「じゃ、今日部活終わったら一緒に帰ろう、って伝えてくれない?」

「いいよ、わかった!」

もはや天使にしか見えない。

危うくJちゃんを好きになってしまうところだった。

もちろん練習中は気もそぞろ。

そして3時頃部活が終わり、急いでJちゃんに結果を聞きに行く。

「部活終わるの遅くなるけどそれでもいいならいいよ、って」

終わるのが6時頃になるらしい。

もちろん何時間でも待ちますよ。

Jちゃんに再びお願いして伝えてもらった。

 

そして3時間近く、私は部室で時間を潰すことにした。

時間が経つのが非常に遅い。

彼女の使う部室は私が待っている部屋から通路を隔てて目の前にある。

薄暗くなり、外で何人かの女の子の声が聞こえてきた。

窓から覗くと小柄な子が1人、ポツンと立っているのが見えた。

間違いなくNちゃんだ。

Jちゃんが作ってくれたまたとないチャンス。

私は激しくなる鼓動を抑えながら思い切ってドアを開けた。

「今日は急にごめん、来てくれてありがとう」

「ううん、いいよ」

最初にそんな言葉を交わした気がする。

その後は何を話したかまったく覚えていない。

Nちゃんが私と2人きり、並んで歩いてくれているという現実。

信じていいのかな、と本当に思った、夢のような時間だった。

学校から駅までは歩いて10分くらいだ。

そして電車でまた10分くらいでNちゃんが降りる駅に着く。

私の駅はその1つ向こうだ。

2人で電車に乗り、ようやく私は気付いた。

このまま別れてしまったら、一からまたやり直しだ。

思い切って告白するか迷ったがやっぱりできない。

ならばせめて次につながないと。

彼女の駅に着く直前になってやっと言葉が出た。

「月曜日も一緒に帰らない?」

「うん、いいよ、じゃバイバイ」

彼女は笑顔を残して帰っていった。

なんとかつながった。

しかし・・・翌日もまたチャンスを生かすことができなかった。

別れ際にまた聞いてみた。

「ごめん、明日も一緒にいいかな?」

「いいんだけど、明日から部活の帰りがかなり遅くなるから時間的に無理かなあ」

さすがにこう言われると待ってるから一緒に帰ろう、とは言えなかった。

結局2回、彼女と30分余り2人で過ごすことができたが、何も伝えられなかった。f:id:Donchang:20210226093551p:plain

 

いよいよ万策尽き、なんとか直接呼び出して気持ちを伝えるしかなくなった。

結果を怖がってばかりいては何も進まない、そう意を決した。

そんな中、クラスの中に私を窮地から救ってくれる女神が現れた。

女の子の話その③ -気持ちの高まり-

↓ 前回のお話 ↓

donchang.hateblo.jp

何か月か過ぎ、夏になった。

Nちゃんとはどんどん仲良くなり良好な感じが続いていた。

昼休みに私が汗をかいて戻ったときにはそっとハンカチを貸してくれたこともあった。

「洗って返すよ」

「いいよそのままで」

感触は悪くない、いや、限りなくいい。

しかし恋愛偏差値の低かった私は、いくら好感触であっても

「こんな私を彼女は本当に気に入ってくれてるのだろうか?」

という疑問が常につきまとっていた。

f:id:Donchang:20210226093437p:plain

 

夏休みに入り、会えない日が続いた。

私は運動系、彼女は文化系の部活に入っていて、お互い学校には行っていたので、

たまに姿を見かけることはあったのだが会話を交わすことはできなかった。

 

そして二学期に入り、体育祭の日。

イベントは滞りなく終了したが、私のクラスでは打ち上げをやろうという話になった。

私は行かないつもりだったのだが、Nちゃんがもし来れば本音を聞き出せるチャンス

かもしれないと思い、出席することにした。

待ち合わせの駅についたとき、主催した男子が私にこう囁いた。

「Nちゃんも来るって言ってたよ」

彼は明らかに"良かったね"という顔をしている。

バレている。

私がNちゃんを好きなことはクラスの誰にも話していなかったのだが、

知られていることを知らなかったのは当の私だけだったみたいだ。

 

席替えで私が一番後ろ、Nちゃんが一番前になったときがあったのだが、

Nちゃんの隣になったAちゃんという子から私に

「席替わって欲しいんだけど、いい?」

と打診されたことがあった。

高校生にとって一番前の席ってのは嫌われ者だ。

普通なら断る。

でもNちゃんが好きな私ならきっとOKしてくれるはずだ。

多分そういう計算がはたらいている。

かくして私はAちゃんの狙い通りの返答をした。

とにかくNちゃんの近くにいたいという気持ちが勝ってしまったのだ。

バレて当然の成り行きである。

 

打ち上げの場にNちゃんは確かにやってきた。

そしてあろうことか、私の隣にきてくれた。

他の人が促したのか、彼女が自分で選択したのかはわからない。

でもそれによって私は彼女と初めて教室以外の場所で親密に会話することができた。

会も終わりに近づき、夢中でNちゃんと過ごしていた私が周りを見ると、誰もいない。

店内にはいるのだが、私のいるテーブルには自分とNちゃんの2人だけ。

どうも周りが気を使って2人だけにしてくれたっぽかった。

いよいよ自分の気持ちに決着をつけないといけない、という思いが高まった。

 

続いて中間考査があったのだが散々な結果に終わった。

一学期は130/650位くらいで上々の滑り出しだったのだが、

一気に450/650位まで下がり、おまけに初の欠点が2つ。

こんなに成績が落ちた理由はたったひとつ。

Nちゃんのことが気になりすぎて勉強にまったく身が入らなかったのだ。

食も細くなり、本当に食事が喉を通らない。

食べる気がしないのだ。

こういうことが本当にあるんだとそのとき知った。

このままではまずい。

「Nちゃんシンドローム」を何よりも先に解決しないことには勉強どころではない。

私は具体的に動こう、気持ちを伝えようと決心した。

・・・のだが、一歩目がなかなか踏み出せない。

先述の通り私は恋愛偏差値が非常に低かった。

だから「望まない結果」になることを過剰に恐れたのだ。

そして同じクラスの子である、ということもここへきて足枷になっていた。

距離を詰めやすい反面、フラれても半年近く同じクラスで顔を合わせることになる。

フラれたけどいいお友達でいましょう、なんて私にはとてもできない。

 

告白するためにはとにかく2人きりになれる時間が必要だ。

LINEもメールも携帯すらまだない時代、ツールといえば家の電話か手紙しかない。

しかしどちらも「親」という難所が待ち構えている。

とても使う勇気はない。

追い詰められていた私に、意外なところからホワイトナイトが現れた。

女の子の話その② -Nちゃんとの出会い-

↓ 前回のお話 ↓

donchang.hateblo.jp

私が入った高校は府内の進学校だった。

その学区のいろんな中学から生徒が集まる。

それはつまり私の周りの人間関係がリセットされたということだ。

そして何よりクラスの女の子たちの私に対する扱いにも中学時代との違いがあった。

皆好意的なのだ。

とにかく話をすれば真面目に聞いてくれるし、決して見下げた態度はとらない。

これから仲良くしていこうね、という意思が感じ取れるのだ。

進学校にきている子たちだったから、というのももしかしたらあったのかもしれない。

とにかく中学時代の慣れ切ってしまったような男女関係とは全然違うのだ。

とにかく自分が対象「外」から「内」に入れたような、そんな気がした。

 

入学後しばらくはお互い手探りだ。

特に異性が相手なら、どうやって相手の懐に入り込むか、話の入り口を考える。

ここで活躍するのが「地元自慢」だ。

いろんな地域から生徒が来ていることで成り立つ定番フォーマットである。

それぞれの地元の特徴や出身有名人。

駅が何個あるか。

特急が止まるかどうか。

人口規模がどのくらいか(デカい方がエラい、という所謂ジャイアニズムが横行する)。

水がおいしいかどうか(人口でディスられた後の反撃にも使われる)。

そんなことで無邪気に盛り上がることができる。

特に地元が同じだと仲間意識が生まれ、心の距離を縮めるのに一役買ったりするのだ。

 

その輪の中に1人、私と中学は別だが地元が同じ、という子がいた。

名前をNちゃんといった。

入学直後から「可愛い子だなあ」と思って気にはなっていた。

私も地元自慢祭りの恩恵で彼女とは少しばかり距離を縮めることができた。

要は仲良くなったのだ。

身長150くらいと小柄な子だったが非常に可愛らしく活発で、ハキハキと喋り、

こちらがボケたときの回収もでき、何にでも積極的に取り組む姿勢のある子だった。

 

高校生活に徐々に慣れていく中で、いつしか私は彼女に惹かれ始めていた。

女の子の話その①。-中学時代-

私にも学生時代に好きな子がいた。

うまくいった子もいればダメだった子もいる。

当然ダメな方が多い。

そんな中で心に残っている子のことをいくつか書いてみる。

 

私の中学時代は女っ気がまったくなかった。

いや、女の子は大好きだったのだが向こうが相手にしてくれなかったのだ。

小中学校は地元の公立だったので、いつもクラスの半分はほぼ顔なじみであり、

さらに男子というのは幼いので、私のようなイケてない男子は「恋愛の対象」

にはしてもらえなかったのだ。

男女仲は基本悪い。

理由はとにかく男子が「アホ」だから。

掃除はサボる、女子(特に気になっている子)をからかう。

そんなことばかりしていた。

3年になってようやく男女仲の良いクラスになったのだが、

既に女の子から見た私のイメージは出来上がってしまっていたので、

まったく浮いた話にはならなかった。

私もそういうもんだと受け止めていた。

かわいい子だな、と思う子はいても、それ以上のことを望まなかった。

いや、望んでも無駄だと悟っていたという方が正しい。

私は至って普通の男子だったと思うが、一度ついたイメージを覆すのは至難だ。

ただ成績は良かったので、女の子に勉強を聞かれて教えたりするだけで満足していた。

そんな私も高校生になったが、ここで私の「立ち位置」が少し変わることになった。