人生の雑記帳

思ったこと。気付いたこと。疑問。後悔。思い出。忘れたくないこと。そんなことを書き留めよう。

学生時代のプロレス行脚の旅日記その①。

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私は学生時代、変わった旅の思い出を作ろうと思い立って実行したことがある。

プロレスファンであったこともあり、ただ旅をするだけではなく

津々浦々で行われるプロレスの試合をいくつ回れるかやってみようとしたのだ。

1995年のことだ。

私は当時北海道に住んでおり、夏休みはだいたい大阪に帰省していた。

そのタイミングに合わせてやってみようということになった。

 

まずは往路だ。

飛行機を使ってしまったら意味がないため、青春18きっぷを使うことにした。

学生の長期休暇に合わせて発売されているJRの格安きっぷだ。

1日普通列車乗り放題、途中下車し放題で5枚ワンセットで当時11300円だった。

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限界まで頑張れば1日2260円で東京から九州まで行くこともできる。

いまは1枚ものになって、使うたびにスタンプを押してもらう形式になったため、

友達と分けて使うとかができず、昔より使いにくくなった。

 

スタートは札幌からなのだが、普通列車をどれだけ効率よく乗り継いでも

1日で北海道を脱出することはできないとわかった。

函館までは行けても、その先の青函トンネルを走る列車の最終に間に合わないためだ。

このプランを立てたとき、北海道のおそろしいまでの広さを実感したものだ。

そのため私は「ミッドナイト」という快速列車を使うことにした。

これは函館と青森を結ぶ夜行快速列車で、青春18きっぷでも乗れる。

日付をまたぐときっぷがもう1枚必要になるが、どうせ翌日も旅は続くので関係なし。

 

青森には早朝に着き、その足で盛岡に向かった。

この日の目標は矢巾町民体育館で行われるみちのくプロレス

ジャパニーズ・ルチャリブレをぜひとも自分の目で確かめてみたかったのだ。

ルチャリブレとはスペイン語で「自由の戦い」という意味で」であり、

主にメキシコで主流になっている空中戦やアクロバティックなプロレスのことだ。

 

矢巾町は盛岡からすぐの小さな町で、矢幅駅(町と駅で漢字が違う)は無人駅だった。

プロレスがあるとは思えない小さな町の住宅を抜けると体育館があった。

本当にどこにでもある"町の体育館"だ。

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この日は覆面ワールドリーグ戦の開幕戦。

私のお目当てはなんといってもドス・カラスだった。

ドスというスーパースターがこんな小さな体育館に本当に来てくれるのだろうか?

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会場に入ると子供たちが実に多い。

みちのくは子供一律1000円という実に良心的なチケット価格設定だからだろう。

しかも全席自由、というか席自体がない。

リングの周りにはブルーシートが敷かれているだけで、どこでもご自由に、なのだ。

当然子供たちは我先にリングサイドに陣取る。

リングと客席を隔てるフェンスもないので、ルチャにつきものの場外戦では

観客も逃げ回り、動き回る。これがまた楽しい。

じっくり見たい人は体育館の壁際でおとなしく立ち見。

実にのどかな光景だ。

かすかに心配だったドスもちゃんと来てくれていた。

あの大物がこんな小さな体育館にいること自体が大変な違和感だ。

初めてフライングクロスチョップを生で見られたことだけでその日は満足。

サスケが浪花に負けたこともサプライズだったが、やっぱりルチャは楽しい。

ドラゴンゲートも含めてぜひとも日本の娯楽として根付いて欲しいものだ。

その日は盛岡で一泊し、翌日から2日かけて大阪まで移動した。

 

そして復路がこの旅のメインだ。

最初の目的地は両国国技館

お盆期間中に開催される新日本の夏の祭典G1クライマックスだ。

異例の国技館5日間連続興行であるが、私は全戦チケットを購入した。

早朝に大阪を発つと、夕方には東京に着ける。

初日の試合開始は6時なので十分に間に合う計算だ。

大阪から東京は列車の乗り継ぎが非常にいいので距離が稼ぎやすいのだ。

だが問題は2日目以降の時間の使い方だった。

同じ場所で試合が続くので、宿泊場所もその近くのカプセルホテルだ。

3日目を除いて試合開始はすべて6時からだったので、非常に時間が余ってしまう。

青春18きっぷは2セット、つまり10日分買ってあった。

この両国連戦時の昼間好きなところへ行って時間を潰せるように、という狙いからだ。

私は2日目以降の4日間、試合開始までの時間で関東近郊の観光地を巡ることにした。

日光の霧降の滝、奥多摩湖、房総半島などだ。

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我ながらなかなかいい時間の使い方だ、と思ったものだ。

奥多摩湖に至っては時間があることで奥多摩駅から歩くことにしたのだが、

季節が季節だったため死ぬ目に遭い、帰りはあえなくバスのお世話になった。

連日の試合はやはり老舗新日本、期待を裏切らない。

途中Uインター山崎一夫の電撃参戦もあり、大変な盛り上がりだ。

トーナメントは武藤が優勝してG1クライマックスは幕を下ろした。

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錦糸町のカプセルホテルに5連泊したためフロントのおばちゃんに顔を覚えられた。

 

翌日は再びみちのくだ。

山形県新庄市体育館で覆面ワールドリーグ戦の中盤戦。

矢巾で既に見ているのだが、何度見ても面白いものは面白い。

早朝に東京を出発すると夕方には新庄に着ける。

新庄は駅こそ矢巾より大きいが、町並みはそんなに変わらない感じだ。

本当にのどかな夕食時の住宅街を一人歩いて体育館に向かう。

みちのくのこの雰囲気、すごくいい。

 

ヨネ原人とウィリーさんの試合のとき、2人が客席に雪崩れ込んできた。

観客を巻き込みながら延々と場外戦を繰り広げる"楽しいプロレス"担当の2人だ。

客席もそれがわかっているので楽しそうに逃げ回っている。

みちのくの試合はだいたい土足禁止なので、みんな靴を足元に置いて見ている。

私は逃げるときについ靴を持たずにその場を離れてしまった。

するとあろうことかウィリーさんが私の靴でヨネを殴っている。

彼はそのまま控室に消えてしまい、靴が行方不明になった。

私の隣に座っていたお婆ちゃんが声をかけてくれる。

 

「あれ、あんたの靴じゃないのかい?」

「はい、そうです」

「ありゃあ、気の毒になあ」

 

お婆ちゃん同情するなら靴探してくれんか。

休憩時間に本部席にいたリングアナに聞いてみた。

 

「あの、ウィリーさんに靴取られちゃったんですけど、ありかわかります?」

「本人に聞いてみないとわからないけど・・・多分本人も忘れてるんじゃ・・・」

 

ネタとしては面白いと思ったが、さすがに帰りに裸足では困る。

とりあえずメインまで見終わってから館内を探して回ってみると、

隅っこの方にきちんと並べて置いてある私の靴を発見した。

多分使い終わってウィリーさんが捨てた後に若手選手が置いてくれたのだろう。

いかにもみちのくらしい出来事だったなあと思う。

 

さあ翌日は再び東京へ戻るぞ。

まだ道半ばだ。