女の子の話その⑯ -Nちゃんとの初詣デート-
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↓ 前回のお話 ↓
脱"放課後制服デート"の3つ目はこれ、"初詣"だ。
制服以外でNちゃんと会ったのはこのときが最初で最後だ。
デートっていうと行くところから何から全部考えないといけないのだが、
そういう選択肢が乏しかった私にとって、出かける大義名分がある方がありがたい。
それが初詣だった。
別に信心深いわけではもちろんなく、ただ彼女と学校以外で会う機会を作りたい。
考えて考えて辿り着いた唯一の答えがこれだったのだ。
↓ の記事で書いたが、終業式の後に駅でNちゃんからリボンをもらった日。
冬休みに入ってしまうので、約束するならこの日しかない。
電話は親経由になるのが確実なので、とてもじゃないがかけることはできない。
私は思い切ってNちゃんに31日の夜に京都行かない?と誘ってみた。
本当は夜遅めに出かけて何か所か回って初日の出見て朝方帰ってくるってのを
したかったんだが、さすがにまだ16歳の女の子だ。
親が許してくれないということで、遅くともその日のうちに帰す必要があった。
正月に入ってから昼間に行けばいいじゃない、と思うところだが、それは違う。
私はこのデートで、なんとしても初キスをしたいと考えていたからだ。
やっぱり昼間より夜が望ましい。
そうなるともはや初詣ではないが、それはもうどうでもよかった。
夜通しあれば1つや2つチャンスあるだろ、って思ってたんだが
その目論見が崩れたいま、日付が変わる前になんとかしなきゃいけない。
私はいろんなプランを考えては妄想と逡巡を繰り返していた。
なんという幸せな時間の過ごし方か。
そして迎えたその年最後の日の夕方。
彼女はちゃんは待ち合わせ場所に時間通りに来てくれた。
付き合ってんだから当たり前といえば当たり前なんだが、
自分のためにちゃんと約束を覚えていてくれたことがなんだかとても嬉しい。
初めて見るNちゃんの私服姿にドキドキしている自分がいる。
制服もいいが私服になると全然違った印象に見えるから不思議なものだ。
もちろんどっちにしても私から見れば最高に可愛いNちゃんであることに変わりない。
電車に乗って京都に向かう。
初めて2人きりでお出かけだ。
もう頭の中は完全に舞い上がっちゃってる。
いつもの学校の帰りではないので知り合いに会うこともまずない。
空いてたこともあって車中ではずっと彼女の手を握り、ただ幸せに浸っていた。
京都に着き、年明けまではまだかなりある早い時間だがお参りをする。
タイミング的には初詣、というよりはその年最後の懺悔という感じになってしまった。
もちろん、彼女とずっと幸せでいられますように、という願いだったが、
どうやら神様は聞いてくれてなかったみたいだ。
あまり長い時間滞在すると日付が変わってしまう。
すぐに戻らないと。
まるでシンデレラだ。
そして私が自分に課した重要なミッションがまだ残っている。
その時間も確保しておかないと。
もちろんどれだけ時間を要するかは自分の持っていき方次第だ。
最初に待ち合わせた場所に戻ってきたのが夜の9時くらいだったと思う。
ここから自宅までは私は自転車、彼女は電車で1駅のところだ。
このまま駅まで送ってしまったら温めていた計画が無駄になる。
今こそあの妄想を現実に変えるときなのだ。
とにかくまずは舞台を整えないと。
少し話さない?といって彼女を駅近くの小さな公園に連れて行く。
人気もなく真冬の暗く寒い公園だ。
京都まで往復してたっぷり時間はあったのにこれ以上何話すんだ?
という気もするが、目的がそこではないのでそれは置いておく。
どのくらいの時間、何を話したのかまったく覚えていないが、
とにかく時間が気になって仕方がなかったことは覚えてる。
話をしながら、どういう展開に持ち込んでいくべきか・・・と悩み倒したが、
何を話してても自然に致す流れにはどうしてもならない。
タイムリミットがどんどん迫るし、とにかく寒い。
半ば開き直り、思い切って
「クリスマスのリボン、どうもありがとう」
「・・・目瞑ってもらっていい?」
会話の流れとかもう完全にどっかいっちゃってる。
というかどうせたいしたストーリーなんか作れないんだから
最初から潔くストレートにこうすりゃ良かったのだ。
かなり強引な流れではあったがようやく本懐を遂げた。
彼女は黙って受けてくれたのだが、その後はお互いなんか必要以上に照れて
意識してしまい、さっきまで弾んでいた会話が嘘のように沈黙の時が流れた。
日付が変わる前に彼女を駅まで送り、ようやく家に帰る。
帰ってきた私に母が聞いてくる。
「何しに出かけてたんや?」
「うん、友達と遊びにね・・・」
ウソつけ。
彼女と会って親に話しにくいこと済ましてきたんだろ。
長い長い夜だった。
時間にして5,6時間程度のことだが、疲れと達成感が同時にやってくる。
家族は紅白を平和に見ており、例年と変わらない年末の光景だ。
私だけがいつもと違う年末になっており、なんか落ち着かず挙動不審になっていた。
夢見心地でボーッと紅白を見ている家族の姿を眺めてた記憶がある。
女の子の唇ってあんな柔らかいんだなあ、って知った思い出の1日。